Enterprise Ethereum Invitational Session ブロックチェーンのビジネス活用における課題と未来の可能性 前編

2024年04月24日

イベント概要

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2023 年 10 月に開催した Enterprise Ethereum Invitational Session にて、「ブロックチェーンのビジネス活用においての課題」、「ブロックチェーンの活用でどのようなゴールを目指しているのか」というテーマで討論を行った。

2023 年 4 月に開催された Enterprise Ethereum Stage に参加したメンバーが多数揃い、非常に有意義な討論となった。


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石井 敦| Atsushi Ishi
Enterprise Ethereum Alliance 日本支部代表。日本 IBM を経て、楽天やライコスの大規模検索エンジン開発を担当。その後、日米韓を横断したオンラインゲーム開発の統括、Amazon Robotics Challenge 上位チームへの技術支援、ホンダへの AI 学習シミュレーター提供、NEDO クラウドロボティクス開発統括などを務める。ブロックチェーンコミュニティ Blockchain EXE 代表。現在、人型 AI プラットフォーム「LUDENS」の開発を進めている。スタンフォード大学 2018 年 AI 特別講義の講師。電気通信大学 元客員研究員。クーガー代表取締役 CEO。

石井: 今回はお集まりいただき、ありがとうございます。4 月の Enterprise Ethereum Stage にご出席いただいた方も複数いらっしゃいますが、今回新たにご参加いただいた方もおり、様々な観点からブロックチェーンのビジネス活用における課題と未来の可能性について議論していければと思っています。

前半は「ブロックチェーンのビジネス活用においての課題」、後半は「ブロックチェーンの活用でどのようなゴールを目指しているのか」を話し合うことで、EEA 側の課題がわかり、課題を解決するような支援をしていきたいというのが今回の趣旨です。では、はじめに Dan よりコメントをお願いします。

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ダニエル・バーネット| Daniel Burnett
Enterprise Ethereum Alliance エグゼクティブディレクター(イベント当時)。著名なウェブ標準化専門家。EEA 理事会、技術ワーキンググループ、分科会、会員コミュニティと連携し、イーサリアムのイノベーションと採用のペースを推進。ブロックチェーンのエコシステムの構築を支援する行動指向のリーダー、ConsenSys ブロックチェーンスタンダードアーキテクトを務め、企業がブロックチェーンの可能性を活用できるようにする標準化に寄与。コンピューターサイエンス博士。

Dan: まず初めに私のバックグラウンドについてお話したいと思います。私は EEA のディレクターで、コンピューターサイエンスの博士号を持っており、ネットワークに関する長い経歴があります。私はスタンダードコンサルティング・ビジネスをしていましたが、2017 年に自身の専門である技術ルーツに立ち戻り、機械学習技術について取り組んできました。 技術とコンピューター科学、この 2 つこそが人々の日常の生活に影響をもっとも与えうる技術だと考えています。私の目標は全ての人を助ける技術であり、コロナ以降、Zoom やその他の技術は、皆様が今お使いのコンピューターサイエンス技術によって作られています。

私は 2018 年にイーサリアム・スペースに加わる機会を得て、2020 年に EEA に移りました。EEA は 2017 年にイーサリアム技術の採用を支援することを目的に作られたアメリカの非営利団体で、非常に若い公的メインネットでした。これはビジネスには全く適しておらず、コミュニティ自体もそれを望んでいませんでした。実際、大企業などのビジネスにおいてイーサリアム技術を採用したいというと、笑われたり叱られたりする始末でした。しかしイーサリアムはここ数年で変わりました。以前はできなかったいくつかの能力を提供できるようになりました。プライバシーの許可とパフォーマンスです。

私たちはこの分野のスタンダードを作っており、仕事のほとんどがパブリック・イーサリアムに関連しています。仮想通貨関連もあります。 イーサリアムの設立当初は、理論と基礎のようなことは考慮されていませんでした。私はここ数年、イーサリアム財団との関係を改善することに注力してきました。私たちはイーサリアム財団と直接的な協力をし始め、議論しています。 EEA が、次にすべき最も重要なことは何かを話し合っています。

課題のひとつは、広く認知してもらうことです。イーサリアムのカンファレンスに行くと、期待が高いことがわかります。7 月にパリで開催された会議で最先端の開発者と話をしました。そこで出されたイーサリアムが採用されるための課題のひとつは、良いウォレットが必要であるということ。今のウォレットには改善の余地があるということです。

私の同僚で、親会社の広報を担当しているトム・ライオンズが、Zoom にイーサリアムの機能を採用することができると言いました。イーサリアムやその他のブロックチェーンなどにおいて、学生たちの働き、技術が欠かせないことはご存じの通りです。私は Crypto Valley Association の人たちと話すことができました。

様々な国において、私はクリプト・ガレージについて多くのディスカッションをしてきました。ブロックチェーン分野においては、時には非常に悪いニュースも流れ活動は停止しましたが、この期間においても私はとても素晴らしい人たちと議論することができました。Crypto Bank、ストリートビルダーだった人、スイス・ブロックチェーン協会の関係者。数年前にスイスの規制当局と協力し、フレームワークの構築に貢献した人物など。私たちは素晴らしいアイデアを出し合い、それらを実現しようと戦略を交換しました。

そこで聞いた課題の多くは、地域特有の弊害でした。企業が対処しなければならない現地の法律や規制です。ある有名な暗号ベンチャーキャピタルと話した時、直接会って話して学べることはないだろうと彼らは言いましたが、私はこれらの体験を通して実際に対面で話すことの重要性を知りました。

私は 8 週間をかけてイスタンブール、ミッドランド、トロント、リスボン、ベルリン、アムステルダム、ロンドン、ドバイ、シンガポール、東京など 12 の都市を訪れ、様々なコネクションや情報を得ています。実はこれらの都市がどれもアメリカではないことが重要でした。

イーサリアム・スペースでも、アメリカ企業やアメリカの思想が非常に重要視されていることが問題になっています。アメリカの証券取引所のステータスはよく知られていますが、世界には実際に技術をつかって物事を進めているもっと大きなグループがあること、アメリカ以外の多くの人たちから学ぶこと、今回のツアーを始めたきっかけがアメリカ以外の現状を知り、情報を得ることでした。

ブロックチェーンのビジネス活用においての課題

石井: では 1 つ目の質問に移りましょう。ブロックチェーン技術全般を企業で活用する上での一番の課題は何だと思いますか?

理論とベース技術には違いがあります。インターネットが公共の基盤となるプラットフォームであるのと同じように、世界で信頼できる基盤となる公的なプラットフォームとしての課題は何でしょうか。

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畑 圭輔| Keisuke Hata
株式会社 スクウェア・エニックス(Square Enix) ブロックチェーン・エンタテインメント事業部 事業部長。2012年に株式会社 スクウェア・エニックス入社し、スマートフォン向けゲーム or コンテンツ開発におけるテクニカルディレクターとして従事。その後、各プラットフォーム関連の交渉、対外折衝などを担う業務部に異動、部門長を経験し、同時に同社初の NFT ビジネスとなる NFT デジタルシール「資産性ミリオンアーサー」を 2021年にプロデュースし、現在に至る。

畑: 私はイーサリアム以外のブロックチェーンを使ったプロダクトのプロデュースをしています。先ほどウォレットが課題という話しが Dan さんよりでましたが、日本において、新しいサービスを利用する時にウォレットを使いましょうといきなり言われても、その必然性はお客様にすぐには伝わりにくい面があります。こういった Web3 のビジネスにおいては、まずウォレットを作ることが最初のプロジェクトとなりますが、お客様は、ウォレットを使わなければいけないサービスの面白さやエンターテインメント性にまず共感があって、サービスが回っていく過程において、デジタル通貨をつかう為にウォレットが必要ですよ、というストーリーになってはじめてウォレットの必要性を感じてもらえるのではないでしょうか。そうなれば AFT が多少難しくても、エンターテインメントとして面白いから実際に続けてみようとなります。

ウォレットが課題なのはその通りなのですが、まずは一般にブロックチェーン技術を使って、どのような面白いものが提供できるのかを示し納得してもらえれば、何かを送る手数料として幾ばくかのお金を払ってくださいというのは、そんなにハードルの高い話ではないと思います。

また、速度面の問題もよく話にあがりますが、とても早いブロックチェーンがあれば課題が解決するのかといえば、そうでもないと思います。それを活かせるプロダクトがあって初めて成立するもので、速度が遅くても面白ければ成立します。つまり体験やエンターテインメントなど、何を提供できるのかのビジネスアイテムが重要なのではないでしょうか。

石井: なるほど。サプライチェーンでもブロックチェーンが必要になっていると思いますが、ブロックチェーン活用の課題について、山下さんはいかがですか?

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山下 真一| Shinichi Yamashita
株式会社 NTT データ(NTT DATA) 技術開発本部 イノベーションセンタ 課長。入社以来、先進技術のビジネス導入に向けた技術開発、評価に従事。2016年よりブロックチェーン関連の活動を開始。現在は、エンタープライズ領域での先進事例開発に取り組む。

山下: ブロックチェーン技術が暗号通貨にフォーカスし過ぎているため、暗号通貨とブロックチェーンの技術を切り分けて認知してもらう必要があるのではないでしょうか。

Dan: 確かに、ブロックチェーン=暗号通貨というイメージが多くの人の頭のなかにあることは問題であり、厄介なことです。暗号通貨や金融サービスは、ブロックチェーン技術の利用法の一つであることは明らかですが、あなた方サプライチェーンや企業では実際に、このイメージ自体がブロッカーになる可能性があります。

石井: 坂本さん、ブロックチェーン活動の課題として ID の認証の点でいかがでしょうか。

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坂本 拓也| Takuya Sakamoto
富士通株式会社(Fujitsu) データ&セキュリティ研究所 トラステッドインターネット PJ シニアリサーチャー。2000年に富士通研究所に異動以降、分散ネットワーク・セキュリティ関連の研究開発に従事。2018 年からブロックチェーン向け、特に Decentralized Identity やブロックチェーン連携技術向けプライバシー/セキュリティの研究開発を推進。

坂本: ブロックチェーンの分散理論の良さがなかなか伝わらないことが課題だと思います。  NFT を使って、世界をグローバルにしましょうといっても、誰かが実際にやって、世界がそうなれば伝わるんでしょうけども、最初の段階で、初めに使ってみたいと思わないことが課題だと思っています。

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稲村 宥人 | Hiroto Inamura
早稲田リーガルコモンズ法律事務所(Waseda Legal Commons) パートナー。2018年弁護士登録。東京弁護士会所属。ベンチャー企業・スタートアップ企業を中心として、中小企業の法律顧問や、地方公共団体等の公的機関への法的助言に関する業務を多く手掛ける。 企業へのサービス内容は、契約書作成・確認や、債権回収等の一般的な中小企業法務にかかる質問への対応から、事業内容の適法性審査や事業スキームに関する相談など幅広い。顧客企業のステータスに応じた”血の通った”サービスをモットーに、顧客に身近な弁護士として日々様々な相談を受けている。 近年では暗号資産・ブロックチェーンに関する法律相談にも専門的に取り組んでおり、Web3.0やNFTといった、最先端の分野にかかわる事業スキーム構築や契約書・利用規約の作成などの業務を担当している。

稲村: ブロックチェーン活用の課題は、色々なビジネスで実験が難しくなったことが挙げられます。2018 年までは法規制もなく様々実験が行えましたが、現在は規制が厳しくなり、スタートアップも試行錯誤するのが難しい状態です。

あまり意識されていませんが、個人情報保護・利用に対する規制が大きな障害になります。というのはパブリックでは個人情報が見えてしまい、漏れてしまう可能性すらあります。そういう将来的なリスクを考えると、パブリックチェーンではやりにくいと敬遠されます。誰からも持っている価値を侵害されないという部分が難しくなると、そもそも何のためにブロックチェーンを使っていたんだという議論になってしまいます。

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河﨑 健一郎| Kenichiro Kawasaki
早稲田リーガルコモンズ法律事務所(Waseda Legal Commons) 代表パートナー。2016年にエストニアを訪問したことを契機にブロックチェーン技術の可能性に魅せられ、エンジニアと共に株式会社ケンタウロスワークスを設立。イーサリアムを用いて、誰でも手元のスマホで改ざんできない記録を作成することができる「BlockRecord」や、同じくイーサリアムベースで電子署名を実装した「電子実印」などのアプリ開発に取組んできた。「Japan Contents Blockchain Initiative」では、SSI・DID 部会副部会長を務める。ブロックチェーン及びクリプトの社会実装に取組んできた経験を活かし、社会実装段階での技術特性を踏まえたリーガルアドバイスを行っている。

河﨑: ブロックチェーンの課題は、今までの中央集権的サービスではできていたユーザーへのサポート、事後処理などが非中央集権サービスだとできないことがあります。非中央集権サービスはそれができないかわりに何かが得られるというのが、本来ブロックチェーンの魅力のはずですが、その何かが言語化されない、そしてその何かを提供できないことが問題になったり、マイナスなニュースが大きく報道された時におよび腰になってしまうのが課題ではないかと思います。

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坂本 健太郎| Kentaro Sakamoto
みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 (Mizuho Research & Technologies) 先端技術研究部 先端技術の専門家として、ブロックチェーン等の新たな価値を生み出す技術の調査研究を行い、それらの先端技術を活用するプロジェクトを技術面から支援している。

坂本: エンドユーザーに価値を感じてもらったりお金を払ってもらうようなサービス設計は難しく、技術面、法の改定などすべてをクリアした上で試行錯誤しなくてはならないのが課題だと思います。

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川口 知宏| Tomohiro Kawaguchi
デロイト トーマツ グループ(Deloitte Tohmatsu Group) シニアマネージャー  Smart Finance / Web3・Blockchain。外資系コンサルティング会社の東京・マニラオフィス勤務を経て現職。ブロックチェーン/web3 領域のコンサルティング、プロダクト開発、アライアンス推進に従事。金融、製造、エンタメ等、様々な業界での事業戦略策定や技術活用の支援実績多数。海外メンバーファームや有力テック企業等、グローバルリレーションを活かしたサービス提供をリードし、海外事情にも精通している。INSEAD MBA、米国アクチュアリー会正会員。

川口: これまで挙げられた以外の課題としては、鍵管理があると思います。エンドユーザーが自身の資産を投資したり、管理する際に、鍵をどこに管理・記録すればよいのか試行錯誤していますが、この苦労及び何かが起こった時に誰にもサポートしてもらえないという不安がなかなか払拭されません。加えて今後、法人が多額のクリプトや法定通貨をブロックチェーンで使用することになると、法人向けにも、安全性・利便性を伴った鍵の管理が課題になってくると思います。

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岩永 朝陽| Asahi Iwanaga
エイベックス株式会社(Avex) テクノロジー顧問。1999年よりシリコンバレーのベンチャー企業で EC サービスの立ち上げに参画。帰国後、日立にてシステム開発、ナスダック上場企業にて放送・VOD 関連のエンターテインメント事業でプロダクトマネージャーとして 9年、さらに海外ゲームパブリッシングなどを経て、2019年4月エイベックス株式会社 執行役員、2019年5月エイベックス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長に就任。 2022年6月24日、 エイベックスを退任しシンガポールに居住を移し『 分散型エンターテイメント・エコシステム』の構築のため、 MetaSolare 「メタソレア」を設立。共同代表及び COO/Co-Founder として就任。

岩永: 例えば音楽業界において、中央集権が持っているこれまでの楽曲の権利自体を、ブロックチェーンを使ってアーティストに持たせてはどうかと思います。そうすると先にお金が入るので、楽曲制作ができるようになる。これはいいアイデアだと思うんですが、確実に有価に該当するのかという問題ですよね。これをクリアしたとして、次に問題になるのが、公示になったものを分散したユーザーにリリースしないでください、となるとビジネスが成り立たないですよね。

つまり、分散した方が前金でお金を得られやすいが、コンセンサスを取って事業として進めていくには、逆の作用が発生してしまう。この状態で経営者が決断できるかというと、難しいですよね。そうなってしまうと、どうして今まで持っていた権利を手放すのかも理解できないし、手放したらお金は入ってくるかもしれないけれども、いちいちコンセンサスを取るなどコントロールできなってしまうとなると、やる意味が見いだせないのではないかと思います。

石井: なるほど、管理を手放した代わりに得られるものがはっきりしないということですね。

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池野 裕介| Yusuke Ikeno
Trust Base 株式会社 (三井住友ホールディングス 100%子会社)ビジネスデザインセンター・ゼネラルマネージャー。住友信託銀行で法人営業、商品開発や投資業務に携わった後、米国ジョージタウン大学に派遣されブロックチェーンの研究に取り組む。現在は STO や暗号資産などデジタルアセット業務や Web3・トークン経済圏の研究に携わる。

池野: 金融の分野でデジタルのことに携わっています。技術的な新しいものをどういったところに使うべきなのか、あるいは我々は金融機関なので、お客様の財産を適用するにあたって、どのように安全安心に提供できるのか、というところが非常に悩ましく、実証実験という形でブロックチェーンを使った資産の書き換えをしています。銀行は法規制が厳しいので、我々子会社は実験場として、言葉は悪いかもしれませんが法律を取り除き、どうやったら面白いことができるのか、安全安心な環境を作れるのか、そういったことを考えた活用をしております。

AI では最近チャット GPT など人間のように話せるロボットなどのわかりやすいアウトプットがありますが、ブロックチェーンの場合ですと、わかりやすくすごいなというところが見えづらい技術なので難しいと思っています。プロボノ技術、バックアップの土台の技術の魅力をいかに理解してもらえるのかを考えていかなければと思っています。

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米倉 佑飛| Yuhi Yonekura
MoA 株式会社(旧株式会社 WonderPro) 代表取締役。元リトアニア国立オペラ・バレエシアターのバレエダンサー。2020年に株式会社 WonderPro を設立。バレエをはじめとする舞台芸術を支援するプロダクトやサービスを開発提供する。近年、アート業界におけるブロックチェーンや NFT の活用を検討中。

米倉: EEA のメンバーでもあり、今は SNS を使った NFT を販売するプラットフォームを開設しています。

私たち特有の課題なのかもしれませんが、作家と話していると NFT の絵画のようなデジタル資産の権利の問題が課題として挙がります。著作権、所有権などのデジタル資産の権利がどういうものなのかが一般の方で浸透していないことをすごく感じます。逆にカスタマーになるような人たちにとって、NFT の絵画資産が生まれた時に、コレクションではあるものの、その後どうするかという、それを飾る場所だったり、プラットフォームがそもそも足りてないのが、課題ではないかと思っています。

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大谷 和彦| Kazuhiko Otani
株式会社 Datachain 事業企画担当。 東北大学大学院にて航空宇宙工学を専攻後、AGC 株式会社にて欧州市場をメインとした新規市場開発、プロジェクトマネージャー、技術営業に従事。2017年に宇宙スタートアップの ispace で事業開発を担当。2023年7月より Datachain にて現職

大谷: キラーユースケースというか、キラーアプリがないのが課題だと思います。ブロックチェーン技術はここにいるメンバーでも難しいと思っているくらいで、万人が容易に理解できるものはないですよね。 企業で決済を得るにはいくつかのハードルがあって、且つその中で全員が全員ブロックチェーンを知っているわけでもなく、むしろ知らない人が大多数だという中、どうしてわざわざ既存のシステムをある意味迂回してまでブロックチェーンを使わなければいけないのかに回答する明確なニュースケースが出ていないというのが、一番大きい課題だなと思っています。


企業で決済を得るにはいくつかのハードルがあって、且つその中で全員が全員ブロックチェーンを知っているわけでもなく、むしろ知らない人が大多数だという中、どうしてわざわざ既存のシステムをある意味迂回してまでブロックチェーンを使わなければいけないのかに回答する明確なニュースケースが出ていないというのが、一番大きい課題なだと思っています。

ユースケースについても、例えばビジネス的に何年で投資を回収する予定であるとかなどのロジックが大事だと思いますが、私個人としてはこれやったら面白いなという感情を揺さぶるケースが大事なのではないかなと思います。結局決断するのは人間なので、ロジックで儲かるから決断しようというところまで、まだ到達していないのではないでしょうか。それよりはやはり、これをやったら面白そうだな、という感情的なところが非常に重要だと思います。

個人的な話になりますが、私の前職は民間で月探査をしようという会社でした。事業開発をしていましたが、月探査をして何のビジネスになるのかというところが、資金集めで非常に苦労しました。御社の課題がこう解決できますよ、というストーリーはもちろん作るんですけども、結局その突破口になったのは、こういうことをやったら面白いですね、という感情のところがうまく作用しました。裏話にはなりますが、その企画は最終決裁者の方の娘さんかお孫さんが、月に行くプロジェクトを知って面白いねと言った、というところから決断してもらえました。

真面目な話、これによって世界が変わるんだ、これをやれば全然違うことが起こりうるんだ、2C だけでなく、2B のビジネスにおいても何か想起できるようなキラーユースケース、キラーアプリがあると、変わっていくのかなと考えております。


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吉田基紀| Motoki Yoshida
株式会社Datachain Marketing & HR Lead。複数のスタートアップを経て、サイバーエージェントにおいて新規広告配信プロダクトの立ち上げ及びグロースを担当。2018年より、創業期のDatachainに参画し、事業企画など事業成長に関わる領域に広く関わり、現職に至る。

吉田: ブロックチェーンが活用されているのは商流で、活用できていないのは金流です。今年に入って改正資金決済が施行されたりとか、ステーブルコインが活用できるというのも大きな動きだと思ってます。ビジネスの流れは、部分的ですけどもブロックチェーンを活用できています。支払いがブロックチェーン上でできると大きな動きになります。来年以降、各社が発行していくことになると思いますが、どこまでキラーユースケースが含まれてくるのか、ポイントだと思っています。


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伊藤 佑介| Yusuke Ito
一般社団法人 ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)代表理事。東京工業大学理学部情報科学科卒業後、システムインテグレーション企業に入社。2008年に博報堂へ入社。13年に博報堂 DY ホールディングスに出向し、マーケティング・テクノロジー・センターでデジタルマーケティング領域のシステムの開発運用に従事。18年から博報堂のビジネス開発局。20年に JCBI を発足する。

伊藤: 私は 2 つの肩書がありまして、EEAJapan と、日本のコンテンツメディアが 70 社集まっている Japan ブロックチェーンイニシアティブです。本日、いろんなコンテンツ系の皆さんと話す中で、ブロックチェーンの課題は 3 つあると思っています。


1,オラクル問題

ブロックチェーン上に記録されたデータの信ぴょう性、ブロックチェーン上に書かれているデータを外部で参照したときには外部の信頼が必要であるというのがいわゆるオラクル問題です。仮想通貨はブロックチェーンの社会適用の非常にレアなケースでしたが、たまたま先にそれが社会実用されただけです。通貨は信用のオラクル問題が発生しない唯一といってもいいほどの稀有な存在です。

仮想通貨以外のオラクル問題は技術だけの話ではありません。このコンテンツのトークンの権利は誰が保証しているのか、物流でいうと、荷物とトークン上の紐づいたデータは誰が信頼を担保なければいけないのか、これは技術の問題というより、法律ないし業界のルールと言ってもいいですが、業界が約束を守るということが求められると思います。


2,ビジネスモデル

仮想通貨という最初のビジネスモデルが簡単とは言いませんが、価値に見合ったものを交換する仮想通貨交換業というのは、どちらかというと簡単なケースモデルで、なぜなら商品に対して責任を持たない手数料ビジネスなので、誰かの取引に対して責任を持たない、リスク低めにできるものです。しかしさきほど申し上げたオラクル問題が発生する構成要素は、発行されたものに対して、コンテンツのトークンであれば誰もがサービスを見られるため、仮想通貨取引企業とは全く違います。企業はこのオラクル問題で約束したものでサービスを提供しつづけるのにコストがかかるのに、何からお金を儲けるのかというビジネスモデルが存在しません。シンプルにいうと、トレーディング以外のビジネスモデルが回らないと、企業は経済活動が行われないと取り組めないので、私もそれをクリアしたくて、みなさんとシェアしています。


3、技術の進歩が遅い

イーサリアムだけではなくすべてのブロックチェーンにおいて、社会常識的に経済の原則に乗る時の課題は技術の進歩が遅いことです。ではなぜ遅いかというと、先に通貨を発行して収益を得ると、そのケースを解決するためにモチベーションを上げづらいのではないかと思います。

株式会社は、株主が求めるようにもっと会社を良くするとか株価が下がるなどの外部評価が存在します。私自身も 2016・17 年からブロックチェーン業界にいまして、この技術が好きなのに、どうして何年も同じ議論をしてるんだともどかしく、また自分を情けないとも思います。コンテンツ業界や物流業界など産業界の声に真摯に耳を傾け、現状の今のブロックチェーンの姿に拘らず、産業界で使ってもらえるように、技術を改善するスピードを上げなければ、いずれ忘れ去られると危惧していまして、そうはなりたくないと日々頑張ってます。


石井: ありがとうございました。これで全員から課題が出されましたが、Dan さんは今後やっていきたいことなどありますか?

Dan: ビットコインから 15 年、イーサリアムから 8 年。我々は今どこにいるのでしょうか?この技術について知り、できることの本質を理解した時、人々は「素晴らしい」と言います。世界のあらゆるところで、様々なものがブロックチェーン技術に置き換えられていくべきです。それなのにこれほど長い間、実現していません。だから私は今あなたたちと話しています。だから私はイーサリアム財団と議論をしています。今こそ溝を越える時なのです。浮き沈みはありましたが、ブロックチェーン技術は今、採用されるか、衰退するかの時に来ています。本日、出されたコメントの中から、いくつかをメモしました。

【プライバシー】

ドイツは世界でも数少ない、現金を使う国です。コロナ禍でも人々は「盗聴禁止」という看板を掲げ、支払いによって個人情報が流出することを嫌がりました。私は幾人かのドイツ人と話したところ、ドイツ人は、同じように個人のプライバシーを大切にする国は日本だと答えました。ですので、個人のプライバシーを重要視する日本で皆さんに会うことを楽しみにしていました。

【ブロックチェーン技術の本質的な価値を証明すること】

私は多くの人がブロックチェーン技術の価値を説明しようとするのを聞いてきました。決済という言葉を使う人もいれば、和解という言葉を使う人もいます。しかし、技術の本質的な価値を実用面において説明できていません。

多くの場合、価値が示されるのは、問題が起きた時です。個人的な例ですが、10 年ほど前、オンラインで確認できる証券の残高と紙の明細書の残高に差がありました。紙の明細書をファックスしたところ、オンライン残高との差額の 5000 ドルが入金されました。これこそが私にとっての本質です。証券会社の記録は、私たちのどちら側からも調整したり、操作したりできない、事故のない方法でないといけません。

私はスイスである資産管理会社の高い役職の方と会いました。彼らは中東などの投資家にストラクチャード金融商品、カスタム金融商品を提供しています。彼らは実際にブロックチェーン技術を使ったスマートコントラクトによる取引を行っています。彼らは 10 万ドル以下ではベッドから起き上がりもしないことで有名ですが、スマートコントラクトにおいて取引額は関係ありません。顧客には紛争があり、解決が必要かもしれません。しかし実際には必要ないのです。なぜならスマートコントラクトにおいては、答えはすでにそこにあり、両当事者は、どのように決定が下されるのかについてすでに合意しているからです。仲裁も必要なければ、議論も必要ない。あなたが争うことができる唯一のことは あなたがその口座を使ってその取引をしたかどうかです。しかし取引をしていないのであれば、コントラクト上に取引自体がありません。

【感動やエキサイティングがない】

誰かが感動やエキサイティングがないといいましたが、クリエイター・エコノミーにおいて、カスタムする必要がないという点に私はエキサイティングします。ありとあらゆるパートナーとの個別の法的パートナーシップ契約をカスタマイズする必要がないのです。例えばアマゾンを例にしましょう。アマゾンは、ストレージとコンピューティングパワーのプロバイダーです。店ではありません。彼らが考え出したのはとてもシンプルな計画でした。アマゾンは、標準化された法的契約を提供しました。アマゾンが提供する預託金保護の質は十分なものとなっていき、たとえアマゾンとの関係を完全にコントロールできなくても、ほとんどの企業はアマゾンに預託することに抵抗がなくなりました。ここにチャンスがあると思います。

例えば購入する資金のない人のために、店頭で突然、貸出条件を提示することができる、これは新しいビジネスチャンスかもしれません。どのような相手ともカスタマイズされたパートナーシップ契約を結ぶことなく、それができるのであれば特にね。これは、API の作成が人々に与えた Web2 における最初の成功でした。以前は紛争が起きる可能性があったため不可能だった分野でも、今では可能になるかもしれないことを私は知っています。

これまではブロックチェーンのビジネス活用の課題について議論してきましたが、次の話題にシフトしましょう。ブロックチェーンの活用でどのようなゴールを目指しているのか。

後半に続く:ブロックチェーンのビジネス活用の未来の可能性