第4回「IDx投票xブロックチェーン」

2020年08月17日

目次

  • 1.Executive Summary
  • 2.Introduction
  • 3.Details
    • 3.1 成果アウトプットに向けて
    • 3.2 インターネット投票実現の課題|市ノ澤 充 /VOTE FOR
  • 4.Conclusions

参加者一覧

  • 富士通研究所

    • 今井 悟史
    • 堀井 基史
  • 日立製作所

    • 江丸 裕教
    • 長沼 健
    • 齊藤 紳一郎
  • アクト

    • 小林 智彦
    • 浅井 延幸
  • ケンタウロスワークス / 早稲田リーガルコモンズ法律事務所

    • 河﨑 健一郎
    • 稲村 宥人
  • サイボウズ・ラボ

    • 光成 滋生
  • コラボゲート

    • 栗原 宏平
  • コンプス / オルツ

    • 西村 祥一
  • VOTE FOR

    • 市ノ澤 充
  • クーガー(主催)

    • 石井 敦
    • 石黒 一明
    • 佐々木 俊平
    • 辰巳 ゆかり
    • 石田 謙太郎
    • 田中 滋之

1. Executive Summary

  • 秘密投票の原則により、機密性は投票の全期間において守られる必要がある。
  • 替え玉投票の防止を含め、投票者が正しい投票権を持っているかを正確に判定できることが求められる。
  • 一人一票という原則を守るため、二重投票を防ぐ必要がある。
  • 信頼性確保のためには、投票箱に何も入っていない事を証明するべきであり、投票後に改竄が行われていない事の証明も求められる。
  • 現在の投票システムでも課題となっている買収防止は、インターネット投票でも同様に課題となるため対応が求められる。
  • 平等性という点において、投票機器所持の有無に投票機会を左右されてはならない。
  • 投票者は自分の投票が有効となっている事を確認できることが求められていく。また、投票結果が正しく集計されている事を誰でも確認できるようにするべきである。

浅井

現在の投票は、第三者による監視の下で投票を行う事で指示や脅迫などの問題を防止しているが、各自の端末を利用した投票であっても平等性を保つために投票所に行かなければならないのか。また、電子投票には条例の変更が必要となるが、その点はクリアできるものか?

稲村

脅迫による投票ではないことの証明は、インターネット投票における最大の課題である。選挙期間中であれば何度でも投票結果を変更できるなどの対処方法を検討しておく必要がある。また、電子投票に関しては公職選挙法そのものを変える必要があり、インターネット投票に関しては条例でも禁止となっている。

光成

脅迫の問題に対する対処方法として、VR を利用する方法が考えられる。VR 上で投票を行う事で投票内容を第三者に隠す事が可能であり、脅迫による投票への介入を防ぎやすくなる。

稲村

新技術の活用という点では、VR の活用は面白い。投票機器の有無に関してはそこまで重要視する必要はないのではないか。インターネット投票ができない人は、今ままで通りに投票所で投票を行うと考えられるため、あくまで達成できればベスト、という要件でしかないと言える。

2. Introduction

現行の選挙制度にある問題点を洗い出す事で電子投票に求められる要件をまとめる必要がある。これまでいくつかの要件が挙げられてきたが、今後はそれらの要件に対して調査を行い、具体的な対応案を検討していく作業に入る。今回のワーキンググループでは実際に作業を行う担当を決定し、今後の作業についての話し合いを行った。

3. Details

3.1 成果アウトプットに向けて

3.1.1 今後の作業担当

電子投票を実施した場合の投票率が、紙で実施した場合の投票率を上回る必要がある。例として、秘密保持や 1 人 1 票など、電子投票で上回ることができる可能性のある物は要件として抑えていかなければならない。

今後の担当は以下のとおりである。

〇秘密保持・機密性・・・コンプス西村、サイボウズ・ラボ光成、クーガー

〇認証・有権判定・・・日立、富士通

〇本人認証・・・日立、富士通

〇 1 人 1 票・・・コンプス西村、クーガー

〇空の投票箱証明・・・コンプス西村、クーガー

〇正確性・検証性・透明性・・・サイボウズ・ラボ光成

稲村

技術面で補えるのであれば、脅迫防止システムに関しても検討していかなければならない。紙による投票でも完全に対応できていない課題のため、クリアできればインターネット投票を世に出す際に非常に有利となる。

石井

脅迫への対応として、発汗量や瞳孔を観察して脅迫の有無を検証するという方法もある。生理現象を観察して感情を読む技術はゲーム業界でも話題になっており、プレイ中の感情の起伏を分析する手段として用いられようとしている。

浅井

現行の選挙では即日開票だが、数日に分けて開票するという運営は法律的に可能か。可能であればブロックチェーンの解析時間を設ける事ができる。

稲村

開票を行うのは即日だが、すぐに公開するのはサービスでしかない。開票から選挙結果の公開まで日数を設けるという事は可能であり、正確性が上がるのであれば、公開をずらすのも手段の 1 つである。また、期日前投票に関しては、公開さえしなければ順次開票して結果を集計しても問題ない。

3.1.2 スコープの確認

今回のワーキンググループで目指すスコープの選択肢は以下が考えられる。

  • 在外のインターネット投票
  • 投票所からの固定端末による電子投票
  • 制限のないインターネット投票

行政の動きも注視しながら、投票に求められる絶対的な要件と実現の可能性のバランスを見てスコープを決める必要がある。

佐々木

電子投票の利用は在外からとされているが、在外者のインターネット投票と投票所からの固定端末による電子投票ではどちらの優先度が高いのか。

浅井

インターネットを使わない投票という事もあり、リスクや実現可能性の観点から投票所からの電子投票の方が重要視されていると思われる。在外者のインターネット投票に着手するのは電子投票の実施が終わってからになると考えられる。

3.2 インターネット投票実現の課題|市ノ澤 充 /VOTE FOR

3.2.1 VOTE FOR での取り組みについてについて

  • VOTE FOR は社名の通りインターネット投票先の実現を目的としており、パイプドビッツから分社して設立された。
  • インターネット投票の実現には投票の判断をするための情報提供が必要であり、VOTE FORVORT FOR では広報誌のテキストデータ化の支援などもしている。
  • 公正・公平で安全な投票のために、公職選挙の分野とそれ以外のアプローチを平行して行っている。
  • 現在の在外投票の投票率は 2%程度と非常に少ない。今後は投票率の改善をしていくべきであり、VOTE FOR でも改善を提案し続けている。

3.2.2 現行選挙の問題点

現行の選挙は非常に緻密に作られた制度ではあるが、その中でもまだクリアできていない課題は多い。今後新しい選挙方法を提案していく上で、現行の選挙制度の課題にも対応していく必要がある。

現行の選挙制度で問題点として挙げられているのは以下のとおりである。

  • 本来、選挙権に性別は関係ないが、現行の選挙では望まぬカミングアウトを迫られる場面があり問題視されている。
  • 代理投票では、代理人と立会人に投票内容を伝える必要があり秘密性が守られていない。また、代理で行われた投票内容が本人の意思を正確に反映しているかという事を確認する方法もない。
  • 現状の国政選挙では毎回 2、3 個はミスや隠蔽があり正確性を欠いている。これは投票者の 1 票がしっかりカウントされているかを確認する方法が無い事が原因である。
  • 投票用紙は特殊な加工が施してあり、片面がプラスティックでコーティングされているため、そのまま捨てられずに放置されているという問題がある。
  • 海外からの投票には FAX が用いられているが、特殊な技術を使用しているため生産中止となった場合に投票する事ができなくなる可能性がある。アメリカでは既に電子メールを使用した投票ができるようになっている。

3.3.3 つくば市におけるネット投票の実証

ここまでに挙げられた問題点をインターネット投票で解消する際、法律的な問題や技術的な課題をどうクリアしていくかが重要となってくる。

2018 年につくば市ではマイナンバーカードによる個人認証や投票にブロックチェーンを使用する実証実験が実施されたが、投票数が 120 人程度と少なかった事もあり、実証結果の信頼性としては不十分であったと言える。

2019 年の実証では顔認証システムやハイパーレジャーファブリックの導入も行われた。

2019 年までの電子投票は専用の機器が必要であったが、2020 年の春に総務省が電子機器の仕様を見直した事から、今後は技術要件を満たした端末であれば専用機器でなくとも投票が可能となった。

浅井

2018 年の実証実験の投票者は 120 人とあるが、それは選挙当日に実証を行ったのが原因ではないのか。自治体の職員は選挙当日は多忙のため、そもそも人を集めるのは難しいのではないか。

市ノ澤

この実証は公職選挙とは別で行っている。実証はオンラインで行われており、指定の場所に置かれたタブレット端末を使用して実施された。

佐々木

在外投票をインターネットで行うという事に関して、具体的な取り組みは行われているか?

市ノ澤

個人認証に使用するマイナンバーカードはいまだ普及率が伸びておらず、今後の進捗が読めない状況が続いている。現状ではマイナンバーカードを国外に持ち出す事も出来ず、持ち出せないカードでどのように投票するのかが課題となる。このような課題から、2022 年の実現は難しいと予測される。

4. Conclusions

一般的にデジタルのシステムには完璧さを必要とする風潮があり、インターネット投票を実現するためには現行の選挙制度よりも優れた提案が求められている。今回まとめられた課題点をクリアしていく事で、今後インターネット投票が実現する可能性は高まっていくはずである。また、現行の選挙の課題点をクリアするだけではなく、デジタルによる付加価値が備われば新システムへの移行も加速していくであろうと考えられる。