第8回「IDx投票xブロックチェーン」
目次
- 1.Executive Summary
- 2.Introduction
- 3.Details
- 3.1 インターネット投票を取り巻く法律
- 3.2 インターネット投票の実現に向けて
- 3.3 インターネット投票の ID 認証と ID 情報の信頼性
- 3.4 投票の秘匿性について
- 3.5 今後の展開について
- 3.6 情報共有
参加者一覧
株式会社富士通研究所
- 堀井 基史
株式会社日立製作所
- 長沼 健
株式会社アクト
- 浅井 延幸
株式会社ケンタウロスワークス / 早稲田リーガルコモンズ法律事務所
- 稲村 宥人
株式会社コンプス情報技術研究社 / 株式会社オルツ
- 西村 祥一
CollaboGate Japan 株式会社
- 栗原 宏平
サイボウズ・ラボ株式会社
- 光成 滋生
クーガー株式会社(主催)
- 石井 敦
- 石黒 一明
- 佐々木 俊平
- 辰巳 ゆかり
- 田中 滋之
- 清水 啓太
1. Executive Summary
- 一般公開ワークショップの開催に向け、担当領域の情報アップデートを行った。
- 法規制・実運用・技術面からの検討を行い、それぞれに現状理解・課題の洗い出し・課題の解消といった展開で説明を実施する。
- 技術に対し完全を求めることは難しい。現状でも完全な運用となっていない箇所は、運用の工夫ではなく罰則で対処するなど、穴を埋める形をとっている。
- 課題を認識したうえで、落としどころを見つけることで社会実装が進むのではないか。
2. Introduction
ワークショップでの一般公開発表へ向けて、担当領域ごとに進捗報告と議論を行った。
- インターネット投票の実現に向けて
- インターネット投票で考慮するべき点
- インターネット投票を取り巻く法律
- インターネット投票の ID 認証と ID 情報の信頼性
- 投票の秘匿性について
- 投票の透明性/確認性について
- 今後の展開について
※本討論会では、順不同で報告・討論を実施。
3. Details
3.1 インターネット投票を取り巻く法律
稲村 宥人|株式会社ケンタウロスワークス / 早稲田リーガルコモンズ法律事務所
稲村 発表に向け、概ねのストーリーは完成しており、本日のレビューをもって最終化に向かいたい。
3.1.1 インターネット投票の定義
インターネット投票の検討においては、現行法下では憲法・公職選挙法、および公職選挙法の特例法に関係するため、要件を確認したうえで対策を検討する必要がある。
3.1.2 現行法下で実現することができるのか
現行法下では、原則として以下の 3 要件をクリアする必要があるとしている。
- 選挙の当日(選挙期日に)自ら投票所に行き
- 公職の候補者の氏名(又は政党名等)を自著し
- 投票しなければならない
一方で、例外的に以下の方法も認められはいるが、いずれの方法も「特定の場所(=投票状況を確認する第三者のもと)に赴いて」投票をする必要がある。
- 期日前投票
- 不在者投票
- 在外投票 そのため、インターネット投票でも第 3 者の確認が必要とすれば、導入の障壁は高い。
現状でも、類似したケースとして電子機器を利用した選挙に関する制度がある。 「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」では、① 選挙人が ② 自ら ③ 投票所において ④ 電磁的記録式投票機を操作することにより投票できるとしているが、いずれにしても ③ の現地投票の要求が制約として課せられている。
3.1.3 インターネット投票を実現するための法改正
前章までのとおり、現行法ではインターネット投票の導入は難しいため、法改正への取り組みを進める必要がある。法改正は「立法事実」および「憲法適合性」をもってはじめて検討可能となるため、当事例では「インターネット投票の必要性(立法事実)× インターネット投票の許容性(憲法適合性)」が要件となる。
足元の状況としては、コロナウイルスの蔓延による現地投票の“密”リスク対策や、若年層の投票率低下に対する施策として位置付けることも可能と考えられることから、許容の可能性はあるのではないか。
法改正の対象としては、公職選挙法・電子投票法が考えられるほか、オンライン選挙にかかる新法を制定する案もあるが、公職選挙法の改正が望ましいと考える。
3.1.4 どのような投票方法なら許容されるのか
選挙の前提として、以下に対する懸念の払拭は必要となる。
平等選挙への懸念
- 一人一票の原則の侵害(権利の買収、システム不全による複数回答票など)
- システムダウンによる投票機会の喪失
秘密投票への懸念
- ハッキング・クラッキングリスク
- 第3者の面前での強制投票による機密侵害
直接選挙への懸念
- 間違い投票
3.1.5 技術はどこまで懸念を払拭すればよいか
現行の選挙運営においても、投票用紙の記載内容(候補者名)を立会人が先に見て、漏洩するようなリスクはある。このような「仕組みでは防ぐことのできない事象」に対しては、罰則を設けることにより防止しているため、インターネット選挙においても同様に倣えばよい。 ルールで担保する範囲・技術で担保する範囲を切り分けて考えることで、導入の道が見えてくるのではないか。
石井 後段で ID を利用する選挙に関する解説があるため、マイナンバーに関する説明もあれば、説得力が出ると考えられる。
3.2 インターネット投票の実現に向けて
栗原 宏平| CollaboGate Japan 株式会社
栗原 投票は民主主義の根幹であり、インターネット投票はデジタル政府の一丁目一番地として位置づけられると考えており、今後の取り組みの重要性を強調するため、解説を追加している。 また、インターネット投票の事例としてロシアを追加している。 システムに脆弱性があり、ダークウェブで販売されているような状況でもあり、改善が必要な事例として参照したい。
3.3 インターネット投票の ID 認証と ID 情報の信頼性
長沼 健|株式会社日立製作所、堀井 基史|株式会社富士通研究所
堀井 重要なテーマとして一人一票の原則、透明性、秘匿性という 3 つを取り上げ、課題を提起したい。 再投票の際にトークンの再発行は必要か、という点でも議論があった点について記載を追加しており、情報を厳密に秘匿する場合、一人一票の確認ができなくなり、情報が不透明になる旨を記載した。 この点において、秘匿性を維持するには他の2つが損なわれることになるため、トレードオフの関係にある点が問題であり、対策が必要と考える。
3.4 投票の秘匿性について
石黒 一明|クーガー株式会社
石黒 前段で議論されている「法改正に必要な要件」と重複するような内容があるため、続きとして話ができるよう整理する。また、要件の中には解消できる部分もあると考えており、今後の実用可能性を提示する意味でも、そのような点を強調していきたい。 現在バッチトランザクションの実装を進めており、実装の中で検知された内容について追加修正を加えたい。
3.5 今後の展開について
ID-Voting としてのワーキンググループは終わりを迎えるが、引き続きブロックチェーンの社会実装に向けた討論を進めていきたい。総会決議などは考えられる。 今後は公開ワークショップがメインとなるが、イーサリアム 2.0 をトピックとして考えている。
また、12 月には Ethereum Association の APAC イベントも予定されている。 こちらも相談させていただきたい。
3.6 情報共有
西村 公開済の暗号ライブラリを利用した、選挙システム構築について問い合わせを受けている。 https://www.belenios.org/index.html
石井 今後も情報を共有しながら検討を進めていきたい。